表現を味わう 違いを楽しむ
西 村 嘉 人

 国語科の指導時数も残り少なくなった7月。いつもは慌ただしく進める読書単元であるが、ちょっとゆっくり表現を味わう学習を子どもたちと取り組んでみた。
 教材は「森へ」(光村6上)である。

「いいなあと思う表現に線を引きながら聞きましょう。」
と指示をして、範読から学習に入った。聞きながら線を引く学習なので、範読はゆっくり、間を十分に取りながら進めた。
 範読を終えて子どもたちに線を引いた箇所を数えさせてみた。少ない子どもで2か所、多い子どもは16か所も線を引いている。この違いが気になるように学習のねらいを説明した。
「一人一人、『いいなあと思う』表現は違って当たり前。例えば、文章を読み慣れている人とそうでない人によっても違うし、内容の好き嫌いによっても違う。この文章で一人一人の『いいなあ』がどう違うのか、確かめ合っていきましょう。」

 この後の4時間は、一人学習を取り入れた。
 耳で聞くことから入った学習であったので、まずはじっくり目で読みながら「いいなあと思う」表現を吟味するのに1時間。前時に引いた線を消したり、重ねたりしながら、ひたすら文章と向き合う時間を取った。一人ではなかなか読み進められない子どもには、側について一緒に読んだり、再度読み聞かせたりした。
 次の時間も、ひたすら読むだけでの時間。今度は、自分で声に出しながら文章を読み、言葉の響きやリズムを確かめさせながら「いいなあと思う」表現を吟味させた。前時と同じく、線を消したり重ねたりしながらの学習である。

 こうして貯めてきた「いいなあと思う」表現を整理しながら、自分なりの理由を書き込んだり、ノートに整理したりする学習を2時間設定した。これまでに線を引いてきた表現を見直し、「いいなあ」の意味づけをしていく時間である。子どもたちは同じ表現をとらえても、
「例え方がうまい」
「様子が思い浮かぶように分かりやすい例えを使っている」
「色をうまく別の言い方で表現していて、イメージがつかみやすい」
のように自分の言葉でその理由を表している。

 学級全体で、「いいなあと思う表現」を交流した時も、同じ表現なのにずいぶん感じ方が違うことに面白さを感じた子どもたちである。「じっくり表現を味わう」子どもたちを楽しませてもらった。
(彦根市立城南小)