教材研究の「想定内」と「想定外」の授業構成力
森  邦 博

 2年生の授業。
 授業者S先生は子どもたちに、今日の学習を振り返って自分の頑張ったことや頑張った友達について書く時間を積み重ねてきた。その文章を読ませてもらいながら話したことから。

 K児ははじめ、なかなか学習の感想文が書けなかった。音読のときも、場面ごとに人物のしたことを書くときも。授業が始まっても教室に入ってくるのが遅かった子。ところが、このK児が「金ぴかシール」を獲得した日があった。それはK児が感想を書きながら呟いたことがきっかけだった。
K児 「このお話の主人公は猫なん?ねずみなん?」
S先生 「どうして?」
K児 「猫とねずみの話だから。どっちが主人公かなと思ったから。」

 S先生は、「驚きました…、K児がこんなことを疑問に思っていたことを知って」と話を続けた。授業に積極的でなかったK児が、自分なりの疑問を持っていて、しかもそれは「読むこと」の学習課題となりそうなもの。
「いい問題やねえ。みんなどう思う?」と、教室に広げると、「ねこや、ねずみや」と、口々に反応が出てきたとのことである。私は「それでどうしたの?」と続けて聞いた。S先生からは「いい疑問を出してくれたKさんに金ぴかシールを貼ってやりました」と返ってきた。
 それを聞いて思った。K児の発言を「いい疑問」だと評価されたことはよいと思う。望むべくは、さらに「それがなぜ、どうよかったのか」の意味づけがほしい。K児の疑問を「よい思いつき」だけに終わらせるのは残念だと。

 このK児の発言が評価された効果か、子どもから他にもいろいろと疑問が出たそうだ。
・猫とねずみのどっちが優しい?
・ねずみはいい子なの?
・猫はねずみを取って食べようとした?お父さん猫だから子猫のために取ろうとしたのだと思うけど…。
・挿絵の「ねこ」の目が小さいことを見つけよ、なんでやろう?
・猫が3回「にゃーご」と泣いてるけど、違う泣き方かな?

 場面ごとに想像して読んできた成果だとも言えるけれども、こういう子どもの反応を「想定内」として指導案に反映できるよう、子どもと教材文の関係についての教材研究ができるようになれば授業はもっと活性化するだろうと思った。
 一方、授業の中でも子どもの「想定外」の反応を生かせる授業の構成力・指導力を持ちたいものだと考えたのだった。
(大津市教育研究所)