本棚  「個性」を煽られる子どもたち 親密圏の変容を考える
土井隆義 著 BK1
岩波ブックレット 2004.9 480円
「個性」を煽られる子どもたち

 佐世保の事件など子どもの事件から、子どもの変容についての論考である。

 まず、友だち関係の変化。「かつての親友が、自分の率直な思いをストレートにぶつけることのできる相手だったのに対して、昨今の親友とは、むしろそれを抑え込まねばならない相手となって」いる。友だち関係を破綻させないためには、過剰な配慮をし「装った自分の表現」をしなければならないほど、重い関係になっているという。

 その反面、公共の場において他人は他者として意識されず、あたかも風景のような意味しかもたなくなってしまうので、平気で「素の自分を表出」できるのである。

 また、「個性」とは、本来、他者と異なった側面を自覚できてはじめて独自性の認識が生まれるものだが、現在の若者たちは自分の中に生来あるものとして考える。「個性的であらねばならない」との思いから、「自分らしさ」の根源、オンリーワンの根拠を、自らの内面世界へ探求する。しかし、それにはゴールがなく、目標はいつまでも達成できない。

 本書を読んで、小学校高学年の子どもを見ていると、なるほどと思うことがある。「現代の若者はわからない」という前にぜひ一読を。(常諾真教)