お兄ちゃんに贈る
廣 瀬 久 忠
3月は、新たな進路へ向かって岐路に立つときである。 深刻な顔をして6年のNちゃんが私のそばに来た。 「高3のお兄ちゃんがずっとずっと行きたかった大学に落ちはったん。草津の大学に受からはってんけどぉ。」 「それで。」 「受かったんやから行けばいいのになんかそう思えへんのやて。ずっと目指していた大学じゃないからって。」 「そやなぁ。」 「先生あのな。2学期の始業式で読んでくれた銀メダルの詩をお兄ちゃんに聞かせてくれへん。お兄ちゃんきっと元気にならはるし。」 やや気が重く、お節介だと感じつつ彼女の家へ行った。兄もよく知っている南小の卒業生である。 濃くて太い書き方鉛筆で一文字一文字丁寧に書き、彼に手渡した。 読んでいる彼の顔がみるみる変わり涙が頬を伝った。そして笑顔で、Nちゃんに言った。 「心配すんな。兄ちゃんは大丈夫やから。ありがとうな。」
彼は、来春を目指している。がんばれ兄ちゃん。勝ち取れ栄冠。 そして、Nちゃんありがとう。 (湖南市立石部南小)
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