本棚  公立校の逆襲 いい学校をつくる!
藤原和博 著 BK1
朝日新聞社 2004.9 1400円
公立校の逆襲 いい学校をつくる!

 著者は東京都初の民間人校長。杉並区立和田中学校の1年半の記録である。

「ビジネスマンの視点というよりは、三人の子を持つ父親の視点で校長の仕事をやってきたつもりだ。息子がこの学校に通っていたら、こんなことを放っておくはずがない、という判断だ。… つまり『前例主義』を排してことに当たれば、全国三万数千校の公立校は、たちどころに蘇る可能性がある」という。

 1年目は様子を見て、だんだん味を出していって4年目で自分の学校経営を完成するというのが、校長の常識だとすれば、それでは緩慢すぎる。変化の時代には、学校といえども経営のスピードを上げなければならない。「なにより、子供たちの未来は、待ってくれない」という言葉には説得力がある。

 著者は一年半足らずの間に80を超える“改善”を行ってきた。図書室の改造、ノートパソコンの導入、土曜日寺子屋、放課後の子供の居場所づくり、標準服の見直し、校地の芝生化等々。公立校でも実現可能なものもある。

 著者のめざすところは、学校の中に「地域本部」を作り、「私立を超えた公立校」の誕生である。(常諾真教)