名 文 に 親 し む
北 島 雅 晴

 漢文や古文等、いわゆる名文と言われてきた文章の素読を5年生の子どもたちに取り組ませているねらいは、次の2つである。
 (1) 日本語のもつリズムに親しむこと。
 (2) はりのある音読ができるようにすること。
 高学年になると、発言の声が小さくなってしまうことも多い。子どもたちに音読や発言の仕方について常に意識させておかないと、教室全体の活気もなくなってしまう。

 1学期は比較的短い漢文を中心に行ったが、2学期からは長文に挑戦した。「平家物語」「方丈記」「奥の細道」「雨ニモ負ケズ」「日本国憲法前文」などである。主に国語の授業のはじめに、全員で音読することにしている。

 ある女の子の日記に、次のような内容のものがあった。

◆お母さんの中学の時、「平家物語」を学習したそうです。なので、今私は、お母さんといっしょにおぼえています。お母さんは、「おばあちゃんの家に平家物語の本がある」と言っています。私は、「その本読みたいなあ」と思っています。(途中略)平家物語を早くおぼえて、いとこのおばあちゃんに聞いてもらいたいです。

 休み時間、女の子が「方丈記」を覚えたので聞いてほしいと言いにきた。その女の子は、その後、「平家物語」「奥の細道」「日本国憲法前文」など、次々と暗唱することができた。古文に抵抗を示す子がはじめは多かったが、このような日記を紹介したり、暗唱する子の姿を見たりして、少しずつ素読が学級全体に定着していった。

   3学期に入り、「素読暗唱会」をすることを私から提案した。まだ暗唱する自信のない子もいるが、もう少し練習して暗唱できるようにしようという気持ちをもつことができた。どの文章を暗唱したいかと尋ねると、3分の2ほどが、「雨ニモ負ケズ」を選んだ。これは、文章そのものも人気があり、ほとんどの子が暗唱できるからだと考えられる。そこで、「雨ニモ負ケズ」は、全員で暗唱することとし、他の作品を選ぶように指示した。クラスの人数が30名。「雨ニモ負ケズ」の文章が30行なので1人1行ずつリレーを行おうということになった。

 暗唱会は、2月のはじめ頃とした。もう覚えたという子がほとんどである。ただ、みんなの前で堂々と発表できるかどうかは疑問が残るので、もう一歩盛り上げるにどうしたらよいかを考えているところである。
(草津市立草津第二小)