巻頭言
異文化コミュニケーション
張  松 気 (Jang Song ki)

 2004年の日本、一年を象徴する言葉として「災」が選ばれ、数々の出来事を心痛ましく伝えた。一方、「様様様様」(ヨン様)は一年の流行を表す四字熟語に選ばれ、急速に広まった韓流ブームの熱気を改めて実感させた。特に、様々な社会現象を巻き起こした韓流ブームは、両国に2300億円という経済効果をもたらしながら一年を締めくくった。

 かつてないブームに驚く一方、心の底から伝わる新鮮な感動と興奮を覚える。同時に、異文化に伝わる役割と影響がいかなるものであるかを深く吟味する。とりわけ、韓流ブームをヒット・アップさせた中年女性たちの熱狂ぶりが異常に思われるものの、その先にある未来の日韓関係に気づき、強く意識せざるを得ない。

 日韓における今日のようなブームは、今から400年前にもみられていた。なかんずく、朝鮮通信士の往来は異文化交流の盛大な式典であった。『その国を知るためにはその国の言葉を知らなければならない、その国の言葉を知ればその国のことが好きになる』と、雨森芳洲は語っている。異なる文化に対する畏敬と敬愛に基づく異文化コミュニケーションは、古代の日韓関係を親密にさせる根源であったと思われる。

 雨森芳洲が朝鮮語養成機関を設置していた対馬から韓国本土の釜山(プサン)までの距離、わずか53km、実に近い国である。しかしながら、全てが歴史問題に帰結されるように、重い過去を背負った現代史は、日韓両国に遠い心の距離を置かせてきた。昨今の韓流ブームが格別に思われる大きな理由がここにある。またその格別さを知るが故に、あの中年女性たちの歓声から、成熟した未来の日韓関係を夢見ているのである。

 実に、400年の時を経て日本社会に再び辿り着いた韓流ブーム、新たな日韓関係を意味する素晴らしい異文化コミュニケーションの第一歩であると思いたい。

 2005年は、日韓国交正常化40周年を記念し、「日韓友情の年」としている。今年も多方面における異文化コミュニケーションが期待される。すでに、両国首脳の合意の下で日韓青少年交流(2004年)が本格的に始まっている。かれらはお互いの文化に触れ合いながら、未来へ向うコミュニケーションを取っているのである。今だからこそ、二十一世紀を背負っている両国の若者たちに、精一杯のエールを送りたい。
(関西大学・大学院 博士課程)