▼保育園長中西賢英さんは、記念誌に子供の頃、父母が諭してくれたいろいろなことが人生の岐路に立った時に役だったと書いておられる。その教えは、「お人が見えたら履物を揃えよ。流し場には熱湯を捨ててはいけない、排水口には飯粒が流れるので犬が飲むとヤケドする。」 履物を揃えるのは自分も気持ちがいいしお客さんも気持ちがいいからだとという。さらに「便所ではツバを吐くな、便所の神様は大・小便を両の手で受けられるので、口でツバを受けなくてはならない。」「松の無節の板は床に使われて磨かれる。同じ松でも便所の踏み板は節だらけで土足で踏まれる。強いからだ。」(星の子保育園創立25周年記念誌)など意味深い言葉が並ぶ。明治生まれの父母は厳しく優しかったとも記されていた。

▼食べ物を粗末にしてはいけないとか、多くの命をもらって生きているのだという教えは中西さんの家庭だけではなく、どの家でも教え諭していた。

▼人の道に外れることはどの家庭でも許さなかったので、子供の心に、世の中にはこういう約束があるということを知らず知らずのうちに覚えていった。

▼価値観の多様化は個性を大事にするという社会を生み出した。様々な文化も生まれた。その幸せを享受しているが、それだけでいいのかと中西さんの文を読んで考えている。(吉永幸司)