巻頭言
涙 色 の 桜
北 田 夏 生
ステンドグラスの赤がぼやけて万愚節
海開き貝のつぶやき黙殺す
逝く夏の少年大人への微熱
砲台の錆が天向く鰯雲
一村が今も血族曼珠沙華
どの田にも神が住みいて稲豊か
けもの早や鋭き目持ち冬に入る
冬蝶の舞う身のどこか輝かせ
美しき順に毀れてゆく冬蝶
別れのキス桜が涙色なんて
(俳誌『花藻』編集長)