1時間で、こんなに書けるの
西 村 嘉 人

 10月末の1週間を富山県魚津市立本江小学校で過ごした。彦根市教員県外研修のメンバーとして、研修の機会を得たからである。1週間の研修期間中、自由に教室を訪問させてもらい、通常の勤務とは異なる角度から学校や教室、そして授業を見つめることができた。

 さて、本題である。 「1週間もいるのだから、どこかのクラスで授業を見せなさい」との学校長の言葉に、5年生で作文の授業をさせていただくことになった。
 飛び入り授業なので、楽しく、面白く、しかも書けた!と実感できる作文学習を、と考えて「四コマ作文」を取り上げた。授業のねらいは「起承転結」の文章構成の理解である。

 学習プリントには、四コマの枠と一コマ目「何かいるよ」、二コマ目「へっちゃらだよ」の吹き出しを書き込んでおく。その横は自由に文が書けるように縦罫線を引いた。
 一コマ目は、「いつ、だれが、どこで、どうした」を必ず入れることを、「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました」を例に説明をし、文章を書かせ始めた。慣れない先生相手であるので、私語もなく緊張しながらの作文である。

 順調に「起」「承」まで書き進めたところでしばらく手を休ませる。いよいよ「転」の場面である。 ここで、子どもたちに、
「『転』の場面に入ります。この場面は今まで書いてきたことをもう一段階大きくひっくり返して、この先話がどうなるのだろうと期待を持たせる働きがあります。じゃあ、この場面の吹き出しを書くよ。」
と話し、「ぎゃあー!」の吹き出しを提示した。子どもたちの表情が動いた。ほとんどの子どもがにやっと笑っている。『転』のイメージが浮かんだようである。後は一気に、四コマ目の「なあんだ」の吹き出しまでの文章を書き上げた。

 作文が仕上がった子どもから、学習感想を書いてもらった。
「こんな作文の勉強をしたことがなかったので、面白かった。」
「気がついたら、紙いっぱいに作文が書けていた。こんなに楽に作文を書いたのは初めてだった。」
 短作文の授業経験のない子どもたちであったので、1時間で作文が仕上がったことが驚きだったようである。
「今日は、楽しい勉強をした。やっぱり関西の人はおもしろいなあと思った。」
には苦笑いするしかなかった。
(彦根市立城南小)