巻頭言
心 強 い 味 方
山 本 真 有 子

 教師になりたいという小さい頃からの夢を実現したいと思っている私に、心強い味方が一人増えました。小学校三年生のTさんです。
 Tさんと出会ったのは「学力支援ボランティア」の公募に応募した学校です。私はTさんのクラスで算数の学習支援をすることになりました。先生から、「Tさんを見てほしい」と言われ、Tさんを見ることになりました。
 ひょうきんな子なのに転校生ということもあってか、「お前はあっちへ行け」と言うような意味のきつい言葉を投げつけられていることもありました。
 私は、そのような時は、
「そんな風にいったらあかんよ。」
「もしも自分が同じようなことを言われたらどんな気持ちになるとか考えてごらん。」
と言ったりしました。きつい言葉を投げつける子には、
「先生は、あなた達が好き。Tさんも好き。悲しみが倍増する。」
と話したりしました。Tさんにも、
「あの子達はきっとあなたが気になるの。だけど、仲良しになろうと上手に言えないのだと思う。きっとあなたのことが大好きなんやと思う。」
と、さりげなく話したりしました。

 Tさんは算数があまり好きではありません。けれども、分からないからと言って、諦めたりしません。分からない時は質問をします。教えている途中で、
「あっ、分かった。」
と言うTさんの笑顔から明るい気持ちをもらっています。

 そのTさんから、先日、
「どうして先生になったの。」
と、質問を受けました。そこで、
「まだ、本当の先生じゃないのよ。」
と、答えると、
「えっ、じゃあ何なの。」 と、目をぱちぱちさせ、一寸前のめりになって聞き返しました。
「ううん。先生の見習いかな。」
と言った時、Tさんは、算数が分かった時と同じように、にこっと笑いました。そして、真っ直ぐ私を見て言ってくれたのです。
「優しいから本当の先生になるよ。」
と。ほわっとあたたかいTさんの言葉が私の心に入り、目と鼻の奥をつんっと刺激しました。そしてもう一言。
「先生にならんかったら、ボランティア失格だからね。」
本当の先生になるのは簡単ではありません。でも私はTさんが押してくれた背中を丸めないで頑張ろうと強く思っています。
(京都女子大学学生)