パネラーとして(国語教育探求の会で学ぶ)
伊 庭 郁 夫

 午後のパネルディスカッションで、パネラーとして学ぶ機会を得た。概要は次の通りである。
【テーマ】 「ごんぎつね」で、こんな「生活と心をひらく言葉の力」をつける
 ○音声言語指導の立場から  長安邦浩先生(山口大学教育学部付属光小学校)
 ○作品論・実践史的な立場から  佐藤明宏先生(香川大学)
 ○読解・読書指導の立場から  伊庭郁夫(さざなみ国語教室)
 ○コーディネーター  中洌正堯先生(国語教育探求の会代表・兵庫教育大学長)

 「ごんぎつね」については、南吉の故郷、愛知県半田市へ教材研究に行った時の出来事や新見南吉記念館の様子が頭に浮かんだ。
 また「生活と心をひらく」とは、まさしく生きた言葉の力を身につけることだと思う。特にコミュニ ケーション力や相手のことを思いやる気持ちを大事にしたい。
 読解指導については、「言葉を結ぶ」「言葉を比べる」の二点が大切である。吉永先生の著書『気持ち発問から文章検討発問へ』を参考にして、全文視写をし教材解釈をした。すると、「びく」や「い わし」等南吉が大切にした言葉が改めて浮かんできた。
 「読書指導」に関しては、自校で取り組んでいる「ボランティアによる読み聞かせ」を中心にその効果を話した。もう一度、南吉の作品を読み返すと、美智子皇后が紹介された「でんでん虫の悲しみ」など魅力的な作品に出会うことができた。

 パネラーの長安先生は、ごんぎつねを一つの事件ととらえ、トーク番組をするという斬新な取り組みを紹介された。子ども達は、ごん、兵十、村人などに同化し、それぞれの立場で対話をするのである。その発想と授業記録の克明さは見事であった。

 また、佐藤先生からは「ごんぎつね」の教科書掲載史から国語学習実践史・論争史に至る幅広い視野からの示唆を頂いた。南吉のスパルタノートに鈴木三重吉が手を入れたことの問題や年代ごとの実践史も興味深かった。更に、中洌先生からも「葬式の晩」や「月のいい晩」など日本文学における夜の意義づけのお話など貴重な視点を教えて頂いた。
 また、前佐賀大学の白石壽文先生からは、35ページに及ぶ実践的で膨大な資料を分かりやすく見事に説明して頂いた。

 そして、何より中洌先生、事務局の吉川先生をはじめ多くの熱き思いを持った先生方にお会いでき幸せな時を過ごせた。
(安曇川町立安曇小)