巻頭言
第三の人生をいかに過ごすか〜会社設立にあたり〜
山 口 正 男

 親に育てられた時期が第一の人生ならば、経済的にも自立した時期は第二の人生であり、定年後の人生はまさに第三の人生であるといえる。人生八十年この第三の人生をどの様に生きるか、また、過ごすことが出来るか、少子高齢化社会が進むにつれ生活基盤である経済活動の深刻化が予想される昨今。そんな時、タイミング良く高齢者の仕事おこしの話が、飛び込んで来たのは一昨年の十月のことでした。

 いちがいに仕事おこしと言っても厳しい経済環境では、非常に難しい話である。しかし、何時までも年を忘れ健康で生きがいのある人生を送る事ができれば、こんなに素晴らしいことはない。滋賀県高齢者生活協同組合は、第三の人生を豊かに過ごす為に、通称名「しが夢(ドリーム)ネット」と命名。“夢”実現のために基本理念である「@福祉 A生きがい B仕事おこし」を中心に事業構想を打ち立て活動を開始いたしました。

 設立総会までこぎつけるのに多少時間が掛かりましたが、幸いにも今年四月法人認可を得る事ができました。滋賀高齢協を立ち上げる以上、我々としては人まねでなく滋賀でしか出来ない郷土を生かした“仕事おこし”をしたい。これが私たちの願いです。

 第三の人生の新たな出発・出会いとして、現役時代に培われた経験を生かし、元気であれば生涯現役としてまっとう出来るような職場を、その為にも“寝たきりにしない” “させない”ための努力はしたい。理想は百歳を迎えてもまだ期待される職場に、また、“生きがい”の持てる仕事場づくりを目指したい。だが、資本主義社会における自由の中の不自由さ、表向きのかっこよさとは別に、若くして波に乗り遅れ脱落する者も少なくない。利潤追求の体制のなかで、残念ながらバブル崩壊後、リストラによる職場からの締め出しなど社会環境は依然として厳しい。このような社会環境の中で高齢者の行き場など到底見つかるはずがない。だからこそ自ら奮い立ち我々でなければ出来ない“仕事おこし”に多くの人が参加してほしい。

 伝統産業の継承(=江戸時代からいまなお続く友禅の下絵の材料として使われる“あおばな”通称地獄花の栽培)、障害者の支援(=琵琶湖に棲む三千トンとも言われる外来魚の駆除・共同作業所での肥料化支援)、経験浅い子どもたちに体験教室を通しての環境教育(=滋賀県が推奨する菜の花栽培・搾取してBDFによる学習船湖の子の燃料として活用)など、母なるびわ湖を抱える滋賀県ならではの仕事おこしは幾らでも考えられるような気がする。それに事業の柱となる福祉事業が加われば鬼に金棒。

 第三の人生のスタート六十歳は、まさに“年齢は背番号”人生に定年なしである。この気持ちを忘れず焦ることなく、現在計画中の事業をベースに着実に実行して行きたいと考えております。
(滋賀県高齢者生活協同組合しが夢ネット 専務理事)