感想の根拠を求める
海 東 貴 利

 これまで、物語文教材では最初に感想を書き、それをみんなで読み合うという活動をしてきた。けれども、「…が、おもしろかった」「悲しい話だった」という感想になり、文章を深く「読むこと」につながっていかないことが多かった。自分の考えを書いたのはいいが、その考えに理由や根拠がなく、また、相手に伝えるという目的のために読んだり、書いたりしてこなかったところに原因があったと思われる。

 「一つの花」を音読し、感想を書いた。印象深く心に残った場面について考えたことや気になったことなどを添えて書くように指示した。
C わたしは「ゆみ。さあ、一つだけあげよう。一つだけのお花、大事にするんだよう……」というところが心に残りました。なぜ「一つだけちょうだい」という言葉をゆみ子は、おぼえられたのだろうと気になりました。わたしは、この話をきにいりました。それは、いい話ばっかり書いてあったからです。
 この感想には、なぜそのように思ったのか、どんなところがよいと思ったのか、はっきりとした 理由や根拠がない。他にも、自分の考えを適切に相手にわかりやすく書くことができていない感想がたくさんあった。

 次時には、最初の感想をみんなで読み合った。一通り読み終えた後、まず、自分の感想を書くときに根拠にした教材文に線を引いた。次に、3人の感想を取り上げ、全員で各々が書いた感想の根拠になった文を教材文から探し出していった。感想の根拠になったと思う文には線を引き、線の横に友だちの名前を書く。最後は、クラス全員の感想の根拠を同じように探し出した。続けていくと、線が重なるところがいくつか出てくる。重なったところは、物語の山場の部分と重なってくる。
 じっくり読むことで読みとりの違いに子どもたちが気づいたり、新しい考えを発見したりすることができた。意外だったことは、子どもたちの多くが、物語を読む中で大切なところを見逃すことなく読んでいることだった。

C こんな感想を持った友だちはどこを根拠にしたのだろう。
C 根拠は同じなのに、友だちと感想が違ったので、どちらが本当なのか知りたい。
など、友だちの感想をじっくり読んでいく姿が見られた。自分の考えを適切に表現するためには、理由や根拠を感想に添えるように、しっかり働きかけることが大事だったと思う。書くときの指示の仕方を考え直すこともできた。
(安曇川町立青柳小)