本棚  脳と音読
川島隆太 安達忠夫 著 BK1
講談社現代新書 2004.5 700円
脳と音読

 表紙に<音読ほど脳を活性化させる活動はない! 最先端の脳科学者と漢文素読を実践するドイツ文学者が説く「脳にやさしい教育」のすすめ>とある。

 「音読」「ことばの獲得」「ことばの力を育てる」と大きく3つが話題となっている。文学者から経験的に出される問題が脳科学の面から解明されていく。もっともまだすべてが証明されているわけではなく、新たな課題が生じることもある。

 「音読は、音のことば、文字のことばの双方を用いる、きわめて高度な活動なのです。脳への入力も文字、音双方ありますし、音の出力もあります。黙読よりも、脳をたくさん使うのは当たり前のことなのです。」(p159) 音読は、脳全体のウォーミングアップになり、その後に行う高度な脳活動を容易にさせるということが証明できているという。

 また、脳の発達にはターニングポイントがあるという話も興味深い。生まれてから3歳までと、10〜11歳くらいから20歳くらいまでに急激に成長するという。このことからすると、小学校の中学年と高学年とでは、学習の仕方を変えた方が効果的なのかもしれない。そんなヒントも得られる。教育関係者だけでなく、子育てにも役立つ書である。(常諾真教)