ノートに自分の考えを書く
海 東 貴 利

 物語の授業といえば、問いを出して、それに子どもが答えるという授業を続けていた。しかし、それだけでは授業は淡々として、読みはなかなか深まらない。
 そこで、少しでも子どもが自分の考えをしっかり持って話し合いに参加できるような授業に取り組んだ。

 教材「やい、とかげ」(教出5上)は、なくした自転車が見つかった「ぼく」が、しっぽをなくしたはずのとかげと再会するまでの、場面の移り変わりや主人公の気持ちを読む物語である。授業では、自転車をなくした「ぼく」の気持ちを想像させることを目標に展開した。

 最初に、感想を発表させた。
C ぼくは、「やい、とかげ」を聞いておもしろいなと思いました。「見ろよ」というところがおもしろかったです。
C わたしはさいごの「やい、とかげ、せっかく生えたしっぽなくすなよ」と言うところが心に残りました。
C わたしは、「やい、とかげ」を読んで、男の子の自転車がどっかいって、かわいそうだったけど、1か月たって、自転車が出てきてよかったなあと思いました。

 発表と発表が絡まないし、発表すれば終わりというような子どもの態度を何とかしたいと思った。
 そこで授業を次のように変えた。課題を出した後、考えをノートに書かせたのである。課題について子どもがどのような考えを持ったのかが把握でき、また子どもは発表の手がかりを持つことができる。すると、発言は次のようになった。

C いいな〜のぶちゃん。ぼくも行きたいなあ。今ごろ自転車どうなってるんだろう。お願い自転車もどってきてほしいなあ。
C 隆平君とちょっと似ているんだけど、のぶちゃんは、野球に行けていいな。ぼくも行きたいな。あの時に自転車のかぎをかけといたらよかった。
C それでも友だちか?ぼくんちでもいいのに。

 この発言の中で、「ちょっと似ているけど」と言ってから自分の考えを述べているところは羅列的な話し合いでは生まれないものである。また、この授業で発言が長くなった。発言できる子も増えた。自分の考えを少し整理することで、自分の言葉で言えるようになってきた子もいた。

 こうした積み重ねをこれからの授業の中で大切にしていきたい。自分の言葉で話し合うことで、物語をさらに深く読むことができ、物語が面白い、分かって楽しいと思うきっかけになるような取り組みを考えていきたいと思う。
(安曇川町立青柳小)