作文の勉強はきらい!でも、書いちゃった!
西 村 嘉 人

 今年は5年の担任である。
 3組の子ども27人の担任であるとともに、学年81人の作文の先生もさせてもらえることになった。
 入り授業での作文指導は久しぶりである。まずは、得意の持ちネタで「西村先生の作文は面白い!」と思わせることである。
 第1回目の顔見せ授業で、
「この1年で、作文が大嫌いな人は嫌い程度に、嫌いな人には嫌いじゃないよ程度に、嫌いじゃないよという人は好きに、好きな人は大好きにしたいと思います。」
と大風呂敷を広げた。子どもたちが、「なってみようやないか!」と意気込んだ。

 子どもたちが注目の第2回目の授業。
「今日の作文の学習は、先生がしたことをそのまま文章にする学習です。見たままを書けばいいから簡単です。」
と説明をしてから簡単な動作を子どもたちの前でした。
 教室の扉を開けて、ゆっくり教卓まで進み、上着を脱いで腕時計を外す、という動作である。
 学習障害を持つD君は、
「ドアから入ってきて、ふくと時計をとった。」
と見たままを書いた。書き終わって周りを見回し、まだ書いている友達を不思議そうに見ている。
「何を書いてるん?」と聞きたそうな表情である。
 D君の思いを言葉にしながら、長く書いた子どもの作文を紹介し、長くするコツを教えた。

 そして、同じ動作を見せて2回目の作文学習に入った。

「ドロボウみたいに入ってきて戸をすーっとしずかにしめた。そして、スーツをぬいで、たたんで、青いぬのをかぶせてあるつくえにおいた。黒いうで時計をスーツといっしょにおいた。とてもしずかだった。まわりもぼくもシーンとなっていた。そして、終わっても、しばらくの間はとてもしずかだった。さっき書いたのより十行もふえていた。ぼくは何でこんなにいっぱい書けたのか、ぼくにもわかりません。ぼくは作文がいちばんきらいだったので、ぼくはとてもうれしいです。」
と、D君は2回目の作文で書いたのである。

 学習テーマの「先生の動きをスケッチ」から言うとやや反則である。しかし、D君が書いたように「いちばん作文がきらいだった」のに「たくさん書いてしまった」ことを自分で自覚できたことが何より素晴らしいと感じ、授業の終わりに紹介した。拍手喝采。
(彦根市立城南小)