本棚  英語を子どもに教えるな
市川 力 著 BK1
中公新書ラクレ 2004.2 760円
英語を子どもに教えるな

 英語活動を取り入れる小学校が増えている。教科として実施する自治体もある。時流に遅れまいとどんどん加速し、まるで英語塾が学校へ引っ越してきたかのようである。

 著者は、子どもに英語を教えることを否定してるわけではない。「子どもの時から英語を学べばペラペラしゃべれるようになるだろう」という考え方が、英語にコンプレックスを持つ大人の「甘い幻想」であることをさまざまな事例から明らかにしている。

 例えば、アメリカの小学校に入って、英語での日常会話はできるようになっても、教科学習に必要な英語が身につかない子ども、日本語を使えなくなってしまう子ども、英語も日本語も日常会話どまりで帰国後の中学や高校での学習に支障をきたす子どもがいる。バイリンガルになるためには、家庭での環境や親の相当の支援が必要であるという。

 外国人とコミュニケーションを行う際に大きな壁となっているのは、「論理的に自分の考えを組み立て、説明する力である」という。
 「『英語を使える日本人』にしたいと考えるならば、『日本語で考えられる日本人』に育てていくことが何よりも重要な課題である」という指摘は重い。(常諾真教)