視点を持って読む(5年)
廣 瀬 久 忠

 人間の生き方に関わるさまざまなノンフィクションを読むことを通して、人間にはさまざまな生き方があることを知り、読者の生き方とも比較しながら人間の生き方を考える契機となることをねらいに学習を展開した。 

 教科書教材「マザー・テレサ」(東書5年)で、どんな人であったか読むとき、どんなことを読み取ればいいかを 問うてみた。
 子どもたちの発言から、○どうしたか(どうしようとしたか)〔言動〕、○どう考えたか〔考え・生き方〕、○その結果どうなったか〔結果・影響〕で、読み通すことにした。

 「マザー・テレサ」を三つの視点で読む経験が、他の作品を読む原動力となった。どのような言葉を見つけ、読んでいけばよいのかがわかることが学習の自信につながった。こんな方法で読むことができるという学び方を身につけたことは確かである。
 全員で読む学習の大切さを十分認識しながらも個々の子どもの読む力を伸ばしたいので、一人で文章に向き合わせ、困ったところに指導者が駆けつけられる指導体制を心がけた。

 ただ、三つの視点での読みをもとに自分の考えを書きまとめるプロセスでは、子どもたちに十分わかりやすい指導ができなかった。
 「どう考えた」の読みの言葉をつなげていくとその人物の人柄がわかり、生き方もわかると指導したが、そのわかり方のプロセスは子どもに響いたとは言いがたい。

 三つの視点「言動」「考え」「結果」を採用したが、伝記であれば、「生い立ち」「業績」「業績をあげた契機となるできごと」「周囲への影響」などの視点も考えられる。たが、ノンフィクションのジャンルに広くあてはまる視点にしたかった。
 集めてきた図書も存命中で各界で活躍しているマスメディアに身近に登場する方々の図書を中心にした。自分たちの生活とかけ離れた遠い遠い過去の偉人は敢えて選ばないようにした。「業績」が重い視点になる危惧があるからである。「生い立ち」についても当てはまりにくい図書もあったり、書き出すのに長時間かかることが考えられ、採用しなかった。

 子どもの学習に対する満足度を分析すると「何かができたとき」「やり終えたとき」「何かがわかったとき」「思いの外学習が進んだとき」に満足している。
 一方、不満は、「やり方がわからない」「説明が早すぎて、不十分」「あまり進まない」「どう書けばよいのか迷う」「時間が足りない」など、わかろう、がんばろうと前向きな姿からの不満である。この不満の解消が子どもに自己学習力をつけていく近道である。
(石部町立石部南小)