トライアングル・スピーチ
吉 永 幸 司

1、体をねじって話す子に学ぶ
 低学年の授業でよく見かけることの一つに次のようなやりとりがある。

T みんなの方を向いてお話をしましょう。
C 聞いて下さい。
C (全員で)はい。
T くじらぐもにのった、子どもは、くじらに・・・
C  同じです。

 授業記録だけを見ていると、いかにも、うまく話し合いが進んでいるかのように見える。
 しかし、実際は、子どもは先生の方を見て、先生に話している。それに対して先生は、発表している子の体を、聞いている子の方に向けて、聞き手を意識させようとしている。発表をしている子は、体は聞き手であるクラスの仲間の方を向いているが、顔や目は先生に向いている。
 体をねじり曲げて話す子の本心は先生に聞いてほしいのである。
 そうだとしたら、先生は子どもの聞き役に徹したらどうだろうかと思う。

2、聞き方を学ばせる
 先生に聞いてほしいのは、聞き役としての表情や相槌、それに反応があるからである。教室の仲間は、先生ほど上手に聞いてくれないし反応もしてくれない。かつて、次のような指導をしたことがある。

T 中西さんと先生がお話をするから、先生の聞き方をみてください。先生のしたように友達とお話ごっこをしましょう。

 中西さんとの話し合いは次の通り。

T  中西さんにおたずねします。たぬきのしたことを読んで、おもしろかったところがありましたか。
中西 たぬきが、おかみさんのまねをして、キークルクルとまわしているところです。

 これだけの会話だったが、中西さんの目を見て聞き、語と語の合間に、相槌を打ったりした。聞いている子ども達には、聞き方を見せたのである。その後、会話を増やしたりして、聞き方を意識させた。そして、隣の子と同じように面白いところを話題に話し合いをさせた。1年生であったからか、話し合いのような形が育ったように思った。

3、トライアングル・スピーチ
 1年生で試みたことを、高学年では、4人グループでトライアングル・スピーチとして実践したことがある。方法は、スピーチをする子、そのスピーチに感想述べる子が2人。更に、もう1人が、2人の話し合いを見るという方法である。話し方・聞き方に注目をさせる方法である。
(京都女子大学)