本棚  星野道夫物語 アラスカの呼び声
国松俊英 著 BK1
ポプラ社 2003.5. 1400円
星野道夫物語

 写真家星野道夫の伝記である。
 学生時代に古本屋で見つけた写真集に掲載されていた「シシュマレフ」という小さなエスキモーの村に興味を引かれ、手紙を書いてその村を訪れる。それからアラスカに魅せられ、アラスカの写真を撮ろうとする。目標の実現にひたむきに向かっていく姿、多くの人と出会い、愛されたその人柄が語られる。アラスカの写真を撮り続け、1996年撮影旅行中に43歳で亡くなった。

 光村図書の国語6年上の第1単元に「森へ」という教材がある。星野の文章と写真で構成されている。作者の生涯を知って読んでみると受ける印象が違ってくる。

 この夏、星野の写真展を見た。大きく引き延ばされ、所狭しと掲げられた数多くの写真の迫力に圧倒される。その魅力を、国松は、
道夫が待つ人だったからではないか。原野でキャンプをし、シャッターを押すまでに気の遠くなるほどの時間があった。たった1枚の写真を撮るのに、何日も何日も待つことはふつうだった。その長い時間に見た光のきらめき、聞いた水の音、触れた土のぬくもり、それらがようやく撮った1枚の写真にこめられていた。
と書いている。(p173) 一度見たら、写真集が欲しくなる、そんな写真である。
星野道夫公式サイト
(常諾真教)