み ず か ら 学 ぶ 1
森  邦 博

「基礎的基本的な学力をどの子にも確かにつけるためには、今まで以上に一人一人に応じたきめ細やかな指導に配慮しなければならない」との意識の基、少人数の授業を進めることにした。

 一つのやり方は、単元の導入は担任が中心になって授業をし、授業が進み個人の学習(繰り返し練習や問題にチャレンジするなど)の場面では、ティームティーチングにより個の習熟度を高める指導・助言を行うもの。 ……A型
 もう一つのやり方は、導入は同じだが、途中から学習集団を分けて少人数授業を行い、大きな集団では見落としがちな児童にも配慮したきめ細やかな指導の充実を図ろうとしたもの。 ……B型

 どちらも授業後の児童の感想を聞いたところ、多くの児童は、「たくさんできた」「しっかりできた」「静かにできた」と答えた。児童にとってはおおむね好評だったことが伝わってきた。

 しかし、私は2人の感想が気になった。
 A型の指導で、子どもは確かに熱心に問題に向かっていた。「分からないところを質問しやすい」「自分の力でできるまでがんばれる」など、複数の指導者によるきめ細やかな指導のよさが見られた。
 が、子どものこんな声に考えさせられた。「先生全部できてしまいました。次に何やったらいいですか?」 ……C児
 意欲のある子の声とも聞ける。しかし、次にやることをまた先生に聞かないとできない子の声にも聞こえないか? この子のこの声に答えて先生が次々に「はい、次はこれをやりなさい」とし続けるのだろうか?

 B型の指導では、学習結果が向上した児童の中に、にもかかわらず「私はよくできない、おそいので……」と否定的な自己評価を書いた子が気になって仕方がなかった。少人数のきめ細やかな指導の効果をあげたと思っていたから。 ……D児
 自分の学習成果(学習前と後の違い)よりも、ほかの子との比較に関心が向いていて、できたのに素直に喜べないでいる。

 C児にもD児にも何か指導で足らないことがあった。それは何か?
 2人の学習活動を動かしているのは、自分が学びたい・分かりたいこと、逆に言えば、分からない・疑問に思っている・課題にしていることの解決よりも、ほかの人(先生・児童)からの働きかけの力の方が勝っているとしたら、学ぶ意欲とは?自ら学ぶ姿を育てるとは?と問い返し、その授業作りの道を探っていきたい。
(大津市立中央小)