どっちの漢字でしょう 〜国語辞典を活用しよう〜
吉 永 幸 司

 5年生の教室。語彙を豊かにして表現力を身に付けるために、国語辞典を活用する機会を多くしていこうと話をした。

 始めは「同じ言葉でも意味が違う場合」にどのように国語辞典を活用していくかを学習した。同じ『明かす』でも「計画を『明かす』」と「夜を『明かす』」では『明かす』の意味が違うことを確認した。
 次に「同じ言い方でも意味によって書き表し方が違う場合」について学習した。「虫歯を『なおす』」の『なおす』は、『直す』なのか『治す』なのかということを質問した。ほとんどの児童が正解して担任としてほっとしたが、国語辞典で確かめて正確にことばを使おうと、全員で国語辞典を引いて確認した。

 児童は、もっとそういう言葉はないかと大変乗ってき、しばらく「どっちの漢字でしょう」というクイズのような時間を楽しんだ。
 「花子さんは、授業中に手を(上げた・挙げた・揚げた)」というように「どっち」というより「ど れ」と選ぶものも出題した。この場合では、意外にも多くの児童が『上げる』に手を挙げた。こういう場合も、すぐに答えを言わずに国語辞典を引いて確かめることが大切である。引きながら「ええっ」とびっくりする声が上がった。
「『手を揚げる』だったら怖いね。」
「へえ、たこを『あげる』の時は、『揚げる』みたいだよ。」
など、『あげる』の多様さに会話が弾んだ。と同時に、知っていると思っていた言葉でも知らなかった部分があったことに気付き、さらに言葉について興味を持ったようであった。

 小学生用の国語辞典には、このように漢字によって使い分けられる言葉が、目立つように特記している場合が多い。ぱらぱらとページをめくっているだけで、その他の同音異義語や同訓異字を見つけることができる。出題の要領が分かったところで、自分たちで問題を作るようにした。その際、それぞれの漢字を使った言葉の意味や使い分け、使い方の例など、ちょっとした解説を加えて楽しくてためになるクイズ大会にしようと付け加えた。

 クイズを作る過程で、どういう言葉があるのか周囲の人に聞いてもいいことにした。その中で、ある児童が「大人でも時々迷うことがあるし、どんな漢字で書くのかということで国語辞典を引くことが多い」等と保護者から聞いてきたことを語ってくれた。また、これを機会にいろいろな言葉を保護者に教えてもらった児童もいた。
 言葉についてのちょっとした会話が生まれているということで、うれしい報告であった。
(甲賀町立佐山小)