比 良 八 荒
好 光 幹 雄

 ビュー、バタバタバタ。カンカラカン。他では早春の穏やかな日なのに、比良山麓では、比良山からの猛烈な季節風を受け、庭の木々が唸り、植木鉢や雑然と置いてある小物が飛んでいく。洗濯物は四方八方に散乱し、物干し竿は落ち、フェンスまでも倒れてしまう。
 JR湖西線では、この突風のために車両が浮いて脱線し、不通になったこともある。

 嘘だろう。そんなことはないだろうと思っていたが、志賀町の比良山麓に住み始めて、この季節風の凄まじさを知った。なるほど、比良八荒(ひらはっこう)と名が付くほどのことはある。
 「三寒四温」「春浅し」と、立春を迎え、春の訪れを表す言葉はいろいろとあるが、この「比良八荒」もその一つである。
 陰暦2月24日、白髭神社で行われる比良八講にちなんで「比良八荒」と言われるようになったそうである。

 そんな話をしながら、6年生の子どもたちと2月の言葉を学習した。  子どもたちに人気のあった言葉は「日脚伸ぶ」「春立つ日」「春の雪」「大試験」「梅」そして、「比良八荒」等である。

淡雪の中にほんのり梅一輪     奈美
手に積もるかたびら雪が花束に   志保
春立つ日庭に干されし洗濯物    智子
水仙を一輪挿しでかざります    映里
帰り道黄水仙がならんでる     陽子
春の雪最後の白いおくりもの    祥治
夜の梅月の光を浴びている     望
トイレでも頭をかかえる受験生   良太
日脚の伸ぶぼくの外出ふえてゆく  和史
日脚伸ぶ時間をまちがえ大変だ   翔吾
比良八荒昨日あったすごいな    翔太
比良八荒湖のにおいを運んでく   翔
比良八荒風と一緒に春を呼ぶ    千央

日脚伸ぶ苺大福買いました     好光幹雄
(大津市立堅田小)