▼あて先は遠山敦子文科相、差出人は文化審議会。答申「文化芸術の振興に関する基本的な方針について(平成14年12月)に「富を得て、日本も、日本人も、お金で買えるものを買いすぎました。衣食足りたあとの富は、時として人間を豹変させ、礼節を忘れさせ、国の生命力さえも萎えさせます」という文言がある。「日本は、この半世紀を爆走しながら、富の代わりに何を手放し、何を見失ってきたのでしょう」とも。

▼ものを作り、ものを売って高度成長の真只中だったかもしれないが、印刷機が発達しコピーができるようになった時、学校の姿も変わっていた。例えば、文集作り。ガリ版で日記を写していた頃には、日記を通して子どもとの対話があった。コピーになってからは、一字一字に心を注ぐということが以前ほど熱く感じることがなくなった。「こんなに便利になっていいのかな。教育は、もっと手づくりでいいのに」と言っている先輩を、機器についていけない人のひがみと聞いていたが、案外真実だったのかもしれない

▼話し言葉の教育がかなり開発され、成果をあげてきた。しかし、技術の発達に比べて、内容の乏しさが気になる。

▼手軽さというものの価値の中には少し入りにくいが、やっぱり考えを練ったり鍛えたりするのは、書くこと。「これからは、書くこと」と密かに考えている。(吉永幸司)