本棚  梅原猛の授業 道徳
梅原 猛 著 BK1
朝日新聞社 2003.1. 1300円
梅原猛の授業 道徳

 著者が、洛南高等学校附属中学校の3年生に、12回にわたって行った道徳の授業をまとめたものである。

 最初の授業で、今の状況を「(小学校に)道徳の時間はありますが、ほとんど道徳と呼べるものを教えられていない。形だけできていますが、中身はない。小学校ばかりでなく、中学校になっても道徳は教えられていません。一方、家庭に道徳教育があるかというと、家庭でもあまりありません」「日本人から道徳心が失われている」と言う。少年による殺人事件、政治家や企業の犯罪も、道徳心がマヒしているから起こっている。
 子どものときから道徳を教えないといけないが、教えるべきものが作られていないから、その提案としてという意図のある授業である。

 著者は、道徳の根源を「母の愛」におく。母の子に対する愛は動物の遺伝子の中に含まれているので、動物にも道徳はあると言う。利他の心を子や孫に、社会や国家、人類に及ぼしていくのが道徳であるという考えである。

 第1時限 いま、日本の道徳はどうなっているか
 第2時限 明治以後の道徳教育はどうなったか
 第3時限 道徳の根源をどこに求めるか
 第4時限 自利利他の行と仏教・キリスト教
 第5時限 自利利他の道徳と社会 家族・会社・国家
 第6時限 第一の戒律 人を殺してはいけない
 第7時限 第二の戒律 嘘をついてはいけない
 第8時限 討論「よだかの星」と「坊ちゃん」
 第9時限 第三の戒律 盗みをしてはいけない
 第10時限 人生をよりよく生きるために 1 努力と創造
 第11時限 人生をよりよく生きるために 2 愛と信
 第12時限 人生をよりよく生きるために 3 感謝と哀れみ
(常諾真教)