本棚  「書くこと」で育つ学習力・人間力
吉永幸司 著 BK1
明治図書 2002.10. 2060円
「書くこと」で育つ学習力・人間力

「中学校でレポートやまとめの文を書くことが度々ありました。多くの友だちが、書くのを嫌がったりしていたのに、私は、嫌と思ったことはありませんでした。どうして嫌がるのかなと不思議な気持ちでした。」(p71)
 著者は、書くことが好きにならないまでも、書くことを厭わない子に育てることが大切であると説く。そのためには、書くことを日常化し、繰り返し書くことによって書き慣れ、「書くことが学習である」「勉強は、書くことをともなう」と子どもが書くことを当たり前に思うような意識づけが必要である。前掲のことばは、そんな教室で育った中学生のものである。

第1章 「書くこと」で育つ学習力
 T 子どもが生きる「書くこと」の学習活動
 U 生きる力を育てる学習活動の創造
 V 「書くこと」の新しい授業展開
第2章 「書くこと」で育つ人間力
 T 生きる力を育てる道徳の時間
 U 「書くこと」を大事にした授業づくり

 「書くという場を得て、真剣に考える。書きながら考えを整理したりまとめたりする。あるいは、書いた後も推敲をしたり、考えを交流するというように多彩な活動が生まれる。」(p3) つまり、書くことは考えることであり、学習そのものである。「書くことの学習力」では、教科の学習で書くことの意味や価値がさまざまな実践場面を通して考察されている。
 また、「書くことの人間力」は、道徳の授業や子ども理解の面から考えられている。書くことに関する実践的なアイデアも随所に示されている。(常諾真教)