本棚  読 書 力
齋藤 孝 著 BK1
岩波新書 2002.9. 700円
読書力

 何のために読書をするのか、という問いに対して、「自己形成としての読書」(第T章)と「コミュニケーション力の基礎づくりとしての読書」(第V章)という2つの面から述べている。読書とコミュニケーションとの関連の指摘は新鮮である。「会話を受けとめ、応答する」力、つまり脈絡のある話し方ができる力は、読書を通じて要約力を鍛えることによって向上するというのである。

 第U章では、読書を「技」として捉え、上達法を4つのステップで説明している。
 1 読み聞かせの効用
 2 自分で声に出して読む
 3 線を引きながら読む
 4 読書のギアチェンジ

 また、「読書力がある」という規準を「文庫100冊・新書50冊を読んだ」という経験で捉えている。それを4年で読むというのである。そして「要約が言える」ということで「本を読んだ」という判断をする。他にも、読書力検定や定期試験の読書問題などの新しいアイデアが示されている。(序章)
 「読書力は日本の含み資産」であり、「日本の地盤沈下を食い止める最良の手だては、読書力の復活にある」と著者は言う。
 巻末には、おすすめブックリスト『文庫百選』もある。読書指導に関わるものとして、ぜひ一読したい書である。(常諾真教)