1 学 期 を 振 り 返 っ て 〜Y君にスポットを当てて
岡 嶋 大 輔

 照れ屋で笑顔のかわいいY君。しかし、しばしば感情がうまく表現できずにノートを破って投げたりすることもあった。授業中は指をくわえてぼんやりしていることも多く、私は、他の子ども以上にY君とかかわることが多かった。

 春。参観日に音読発表会を開こうということで、Y君は「たけのこぐん」という短い詩を3人で音読することに決めた。グループごとに空き教室に分かれて、どんな音読をするかという秘密会議をしながら、練習を重ねていった。「たけのこぐん」グループで、率先して意見を述べていたのはY君であった。「ここは大きな声で」「最後は、みんなで声を合わせようか」と、詩の中の言葉一つひとつの感じを出すように考えてもいる。さらに、体の動きまで付けたのは、このグループだけであった。
 発表会当日、緊張した面持ちで3人は「たけのこぐん」を音読した。その後の感想の発表では聞く側もよく聞いていて、私が褒めたかったことを全て発表してくれた。私は、3人の練習風景を語ることで教師のコメントとした。周りからは拍手。顔を両手でこすって照れるY君の表情が印象的であった。
 Y君にとっては、小グループに分かれたということや、秘密会議をしたということがよかったように思われる。授業としては、どう指導するかというよりは、どう見取り、それをどう評価するかに重きを置いたものであった。

 春から夏へ。説明文「たんぽぽ」の文章をもとにクイズづくりをした。一人がクイズを出題し、みんなが答えていくという場面。答える際に「○ページの○行目の〜というところから分かりました」と必ず言うようにした。答えを勢いよく発表していったのはY君だった。発表の型を示したことがY君には分かり易かったように思われる。
 それから、Y君は、「○ページの…」と言って、みんながそのページを開けるのを待ってから「○行目の…」と続けて発表していった。形式のみにとらわれず、聞く人の立場に立って答えを述べることができていたのが嬉しかった。「Y君すごいね」と褒めると、Y君は「だって、先生だっていつも待っていてくれるし」と返した。細かいところまで見ているのだなと、はっとさせられた一言であった。

 Y君に限らず、どの子もが輝ける場面をもっと増やすためには、子どものことをよく見ないといけない。そして、見られているということを意識しないといけない。2学期に向けて気を引き締め直しているところである。
(甲賀町立佐山小)