「やまなし」でパネルディスカッション
西 村 嘉 人

 範読を終えると子どもたちの溜息が聞こえる。「やまなし」の学習の導入である。
「わからん。」
「クラムボンって何なん?」
いつもと同じ反応である。
 続いて「イーハトーヴの夢」も範読する。長い話なので聞いているだけで結構疲れるらしい。

 今年度の教科書から「やまなし」と宮沢賢治の伝記がセットになった単元が設けられた。1学期最後の国語の学習単元である。
 物語と伝記を合わせて読む面白さを子どもたちに感じさせることが学習の大きなねらいになってくる。そこで、「伝記を参考にしながら『やまなし』を読んで、宮沢賢治が表したかったことを考えよう」と言う一人学習のテーマを提示して、3時間を子どもに任せた。個別指導の必要な子どもにはこの3時間で音読の練習をさせたり、言葉の意味調べをさせたりする貴重な時間でもある。
 一人学習の後には、必ず学習報告会をもっているので子どもたちは自分の学習してきたことをノートにまとめ、報告ができるように準備をしている。

 今回はその報告会をパネルディスカッションで行うことにした。 子どもたちに、パネルディスカッションの方法をかんたんに説明した後、グループ内の話し合いで代表者(3名)を決定した。
3名の子どもには、パネルディスカッションに入る前に、
 ○五月と十二月のどちらが好きか
 ○賢治さんは五月と十二月のどちらが表したかったのか
の二つを大きな話の柱にすることを打ち合わせた。

 そのまま、すぐにパネルディスカッションを始めた。
 3名の子どもがまず五月と十二月のどちらが一人学習を通して好きになったかを主張する。五月が1人、十二月が2人。根拠は「表現の美しさ」(五月)「おだやかで雰囲気が柔らかい」(十二月)である。聞き手の子どもたちからは「十二月にも表現のきれいなところはある」「五月は鳥が飛び込んでくるけど、十二月はやまなしで表していることが全然違う」などの意見が重ねて出された。
 賢治の表したかったのは、の問いには「五月」(1人)「十二月」(1人)「どちらも」(1人)と分かれた。聞き手の反応もさまざまである。

 「やまなし」を話材にして、「パネルディスカッション」をすることで子どもたちの言葉の力のつき具合が見えてきたように感じた。甘い評価だが「言葉を手がかりにしてよく考えられるようになってきた」と言うことである。
(彦根市立城南小)