巻頭言
雑     感
村 上  誠

 何を書こうか迷いに迷い、これまでの教師生活を振り返ってみることにした。人生には、いろいろな出会いがあるが、自分の生き方を変えるような出会いは、めったにあるものではない。私にとって高橋一成先生との出会いがそうであった。これといった専門性もなく教師生活を送っていたが、先生との出会いによって、社会科教育へと駆り立てられた。以来、どこかを訪ねると、家族旅行でも、そこの地域の特色をさがしたくなる。妻には「こんなときくらい仕事のことは忘れて」と叱られるが、私にとって、とても楽しいのである。

 高学年を担任したとき最初の社会科授業で、必ず「日本で一番よく雨のふるところは? 一番雨の少ないところは?」と尋ねることにしている。これまでに、この問いに正解を答えた子はいない。そこで、次の質問をする。「どうしたら分かるかな?」子どもたちは、頑張って考える。そして、「地図帳かな?」と言う答えが返ってくる。「そのとおり、じゃどこを見るといいなか?」と誘い水を向けてやると、「あった気候のぺージだ」「一番多いのは○○で、一番少ないのは△△だ」と答えを見つけることができた喜びに溢れた声が返ってくる。ここでは、わざと「○○」や「△△」のような伏せ字にした。なぜなら、これを読まれた人でもし興味をもたれたら、自分で地図帳を開いて調べてみてほしいからである。

 この導入で、ほとんどの子どもが「地図帳って便利なんだ」と思うようになる。それで、教材の中に自分の知らない地名が出てくると地図帳を使ってすぐに調べるようになり、その場所が載っているところを「何頁に出ているよ」と得意そうにまわりの子に教えている姿を見るのは、とても嬉しいものである。

 この導入方法は、高橋先生に教えていただいものだが、これを「自分だけのもの」と他の人には教えず大切にしてきた。でも、私も40歳を超え所謂「中堅教員」と言われるようになってくると「そろそろ他の人にも…」と考えるようになってきた。地図帳の使い方を知らない子は以外と多い。「調べる力」が強調される新学習指導要領である。これを読まれた人は、是非試してほしいと思う。
(宮津市立宮津小学校)