お も し ろ い 発 問
伊 庭 郁 夫
中学校の体育の先生が、私の国語の授業を見に来られた。授業後の開口一番。 「おもしろかったです。」 「どこがですか。」 「先生の発問です。」 扱った教材は、4年生の説明文『花を見つける手がかり』である。 「作者の吉原順平さんは、何とかわかってもらおうと思ってこの説明文を書かれたんだね。その秘密 が見つかった人は立って発表してください。」 ほとんど全員が立つ。 「もんしろちょうが、どんなちょうかを最初に書いています。」 「実験でわかったことが順に書かれています。」 「においのしない花―プラスチックの造花のようにを使っています。」 その他、次々と思い思いの発表が続く。黒板にまとめた後、 「説明文は文章ばかりですか。」と問いかける。 「写真や絵があります。」 「そうだね。写真や絵があるとわかりやすいですか。」 「わかりやすい。」と口々に反応。 そこで、カラーコピーした写真や絵を取り出し、黒板に貼る。 「この絵を見ておかしいなと思った人はいませんか。」 と、4種類の色紙にちょうがとまっている絵を示す。きょとんとしている子。 「私は、この絵がおかしいと思うけどな。」と更に聞く。 「色紙の大きさが小さい。」 「ちょうの飛び方がおかしい。」 などの反応。 「文章と絵を比べてみると気がつくと思うけど。」 「わかった。教科書には二百ぴきほどと書いてあるのに、絵では少しのちょうしか描いていない。」 「よく見つけたね。では、どうして、少ししかちょうが描いていないのかな。」 「たくさんのちょうを描くと、わかりにくいから。」 「どの色に多くのちょうが集まったかが分かればいいので。」など。 子ども達が疑問を解決していくと、授業が盛り上がる。 「では、難しいことを聞くよ。初めには、『もんしろちょうにきいてみればわかるのですが』と書いてあるのに、最後には『昆虫は何も語ってくれません』と変わっているね。どうしてなのかな。」 「もんしろちょうだけでなく、昆虫はどれでも語らないから。」 「もんしろちょうも昆虫だし、昆虫は何も話さないけど、考え方の筋道を立てて実験や観察をすると生活の仕組みがわかるから。」等々。 4年生なりに自分の言葉で、何人もが反応してくる。 この授業の前日には、全文を私自身が視写し、どこから子どもが発表してきても応えられるようにした。国語の楽しさが、中学校の先生に体感して頂けたようだ。 (安曇川町立安曇小)
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