本棚  わたし琵琶湖の漁師です
戸田直弘 著 BK1
光文社新書 2002.1. 680円
わたし琵琶湖の漁師です

 「琵琶湖の漁師です」と自己紹介をすると、困ったような顔をする人があるという。「琵琶湖がいくら大きいといっても、しょせん湖は湖。漁師が生活できるような漁業が成り立つはずがない」と思う人が多いのである。その琵琶湖には50近くの漁業組合があって、年間2000トンほどの漁獲量があるという。

 フナ・アユ・モロコなどを獲っているのだが、どんな方法で漁をしているかとなると、滋賀県に住んでいても知っている人は少ないだろう。琵琶湖特有のエリ漁や沖すくい網漁、コイト漁などの漁法があるが、どれも「待ちの漁」だという。集魚灯を使って魚を集めたり、魚を追いかけて獲ったりはしない。魚を根こそぎ獲ってしまわないための古代からの賢明な漁師の知恵だという。

 その琵琶湖の漁業も今、危機に瀕している。ブラックバスやブルーギルなどの外来魚問題である。アユやモロコなどの稚魚を食べてバスやギルがどんどん増え、南湖の90%はもう占領されているという。わずか15年ほどで琵琶湖の生態系が崩れ、漁獲量は半減、固有種も絶滅しかけている。

 第1章 われは湖の子、琵琶湖の漁師
 第2章 漁師ハ雨ニモマケズ雪ニモマケズ
 第3章 琵琶湖と魚が漁と人生を教えてくれた
 第4章 ええかげんにせえ! ブラックバス、ブルーギル
 第5章 こんな楽しみもあるから、漁師はやめられん

 琵琶湖のすばらしい景色を愛でるだけでなく、琵琶湖の内側を知るための格好の書である。(常諾真教)