本 を 見 な く て も 読 め る よ
高 野 靖 人

「本を見なくても読めるよ。」
 出張の担任に代わって、1年生の教室で国語の授業をする。
 自習計画には、「音読・視写」と書かれており、視写のプリントが用意されていた。事前に担任と打ち合わせができる時は、相談しながら授業を組み立てるのだが、今回は、打ち合わせをしていない。また、急に入ることになったため、授業の構想を立てる時間もなかった。そこで、「音読・視写」という計画に沿って、子どもたちの学習をみながら、授業を展開することにした。

 指示された教材は、「どうぶつの はな」(東京書籍)。大きな写真が効果的に使われた、1年生最初の説明文である。
「さあ、『どうぶつの はな』を読んでみましょう。」
と、話しかけると、数人の子どもが、冒頭の言葉をつぶやいた。
「本を見なくても読めるよ。」
「そう。もう、教科書を見なくても、読めるの。すごいね。それじゃ、みんなで先生と一緒に読んでみようか。」
 ゆっくりと、読み始める。さすがに、みんな大きな声で、重ねて読んでいる。(やはり、読み込んでいるのだな)と思いながら、ページを進めていくと、意外に子どもたちの声に元気がなくなる。同じペースで読んでも、合わせることのできない子どもが多くなる。
 そこで、次に、句点のリレー読みをして、一人一人の読み声を聞いてみる。どこを読むのかわからない子、一人で読むことに緊張する子、堂々と大きな声で読める子と様々である。

 二巡くらいすると、また、つぶやきが聞こえてくる。
「もっと、読みたいな。」
「全部、一人で読みたいな。」
 そこで、読む長さを自分で決めるリレー読みに変える。句点単位で、着席したら、次の人に交代というルールである。(どんどん読み進める子どもがいるかな)と期待していたが、ほとんどの子どもが最初の句点で着席する。一巡したところで、句点二つ分読んだ3名が、最高であった。

 音読の最後に、教科書を見ないでどこまで読めるか、希望者に挑戦させてみた。10名程度が希望したが、時間の関係でチャレンジしたのは、5名。1ページは、全員クリア。4名は、2ページでつまって終わり。1人だけ、3ページまで進んだ(全部で、5ページ)。
「本を見なくても読めるよ。」
「全部、一人で読みたいな。」
は、1年生の意欲の表れである。実力が伴っていないと、笑うべからず。入学して、まだ数ヶ月。学ぶ喜びから、素直に意気込みを見せる1年生に拍手したい。実力を付けるのは、我々の役目である。
(大津市立仰木の里小)