▼通勤の時間帯を過ぎた駅ホームで気がついた話。二組の親子が電車を待っていた。1人は4才くらいの女の子。もう1人は2才くらいの男の子。女の子が男の子の面倒を見ていた。母親同士はおしゃべり。女の子が「どんぐりころころ」と歌い出した。男の子も「ぼく知ってる」と一緒に歌った。

▼男の子は知っている部分は大声で歌う。女の子の声も大きくなる。「どんぐりころころ」まではよかったが、「おいけにはまって」が「おそとにはまって」になったりして、完全に男の子のペースにはまった女の子は歌い終わった後、「たっちゃんと歌っていると、意味が分からんようになるわ」とつぶやき、一人でもう一度歌い直した。「これでいい」と満足に歌えたことに満足した様子。4才の子でも、自分を評価する力を持っていると、ちょうど「自己評価」について考えていた時なので、女の子の仕草が心に落ちついた。

▼ちょっといい話をもう一つ。ビル街に人々の心を癒すような人工の庭園が造られた。見事な庭なので、それを守っているガードマンに「よい庭ですね」と思わず声をかけたところ「ありがとうございます」という言葉が返ってきた。「そうですね」でなかったところに心をひかれた。ガードマンにとっては他の会社のもの。それをわがこととして受けとめた人格や社員教育の成果か。(吉永幸司)