「 出 会 え て よ か っ た 」 を 軸 に 〜海にねむる未来〜
吉 永 幸 司

 教材「海にねむる未来」(5年光村)は、海に生きる生命の神秘と真正面に向かい合っている生物学者を追う説明文である。
 段落関係を確かにしながら、要旨を正しく理解することが教材の意図である。
 この目標に近づくには、いろいろな方法があるだろうが、「出会えてよかった」をキーワードに授業を構想した。

 なぜ「出会えてよかった」かについては、学習とは今までの自分から、次の自分へ少し高まることを自覚することであると考えているからである。
 これは、自己評価の考えが背景にあるし、学習に対する自覚や責任のようなものを考えているからである。
「□□□□と出会えてよかった」を、子どもに投げかける。

 教材研究の段階では、次のようなことが想定できた。
(1) ザスロフ博士に出会えてよかった。(このような研究をしている人を今まで知らなかった)
(2) ポンポーニ博士と出会えてよかった。(人間の薬をいろいろ考えていてくれている)
(3) バング博士と出会えてよかった。(カブトガニを見つけ、新しい薬を発見してくれた)
(4) 矢野哲治さんに出会えてよかった。(今まで知らなかったことを教えてくれた)
(5) このことばに出会えてよかった。(珍しいことば、使ってみたいことばを見つけた)
 (1)(2)(3)は教材内容、(4)は筆者、(5)は言葉。
 授業では、さらに「出会えてよかった」が広がることは確実である。

 今までの説明文の指導と次のことが違ってくる。
○説明文を機能的に読むことから、生活と結びつけた実用的な読みに変えていく。
 これは、わかった・知ったということを大きく包みこみ、「よかった」へ広げていく。
○自ら求めて読むという方向へ姿勢の転換をはかる。
「何が書いていましたか」「段落に分けましょう」では、集約的な方法になる。
 一人一人の求めるものの多様性と、習得させたい内容の普遍性を総括するための工夫が必要になるという考えが根底にある。
 与えられる学習から、求める学習への転換を図りたいという強い思いがある。さらに「よかった」のぬくもりを大切にしたい。(授業実践は次の機会にしたい)
(京都女子大学文学部)