聞くポイントを切りかえる力
池 嵜 繁 伸

 フローティングスクールを、子どもたちが教室で身につけた国語の力を生かす場であるという視点で見直すと、国語科の授業でどんな学習活動が必要なのかが見えてくる。

 フローティングスクールでの活動を行うには「聞く」という言語活動が大変重要になってくる。
 ○開・閉校式での挨拶を聞く。
 ○乗船指導、オリエンテーション、避難訓練で注意事項を聞く。
 ○船内見学で船の説明を聞く。
 ○展望放送で琵琶湖の様子について聞く。
 ○就寝説明で就寝準備の仕方について聞く。
 どれも同じ「聞く」という活動ではあるが、それぞれ聞く内容によって、頭の中での整理の仕方(聞く観点)が違うのではないかと考える。
 ●自分の意見や感想を持ちながら聞く。
 ●気をつけることやしてはいけないことをその理由を考えながら聞く。
 ●知識を得るために聞く。
 ●次に自分がしなければならないことについてそのやり方を聞く。

 ただ漠然と聞くのではなく、うまく話を聞き取り、次の活動に生かしていくためには、聞く内容や目的によって、話の全体・細部・順序・名称・数値等の聞くポイントを切りかえられる力が必要だと考える。
 一度聞いて記憶できる言葉には限りがあるので、いくら子どもに、「しっかり聞きなさい」とだけ指導して、「また、聞いていなかったの!」と叱ることを繰り返しても、聞く技術は身につかない。話の中のポイントとなる言葉を意識させていないからである。

 国語科の学習活動を工夫する中で、態度面だけではなく聞く技術を身につけさせたい。
 まず、話し手(教師)は、聞き手(子ども)がある程度聞く観点が絞れ、見通しがもてるように前置きをしてから話すように心がけたい。例えば「これから食事準備の仕方について説明します。用意する順番に気をつけて聞きましょう」等である。
 次に国語科の学習では、どのポイントに気をつけて話を聞けば、目的にあったうまい聞き方ができるのかを学習活動を通して自覚させる必要がある。
 発達段階に応じた「聞くポイント」を指導する教材を開発し、聞く技術を身につけさせる学習活動の展開を工夫したい。その際、メモを取りながら聞くという活動が、評価の面からも有効であろう。
(滋賀県立びわ湖フローティングスクール)