運 動 会 と 言 葉
伊 庭 郁 夫

 安曇小学校では、子どもを主体にした運動会を目指し、本年度は次の10点を中心に取り組んだ。
 @テーマの設定と作成 (全校)
 A児童が考えた絵をプログラムに (6年生)
 B応援合戦の計画と実施 (児童会)
 C各色の横断幕作成 (6年生)
 D児童会種目(大玉送り)の計画と実施 (児童会)
 E開会式や入場での児童の出番 (放送、宣誓、団長の言葉など)
 F独居老人の招待(レタックス) (4年生)
 G入学前児種目での交流(入学前児と5年生)
 H敬老席の設置(ボランティア委員会)
 I主体的に取り組む係活動 (5、6年生)

 運動会に取り組む子どもの姿を見ていると、言葉の力の面でも向上や飛躍が見られる。
 @では、一人の団長A児が自信をなくしかけた。家の人の話では、「団長を代わってほしい」とこぼしたという。普段の授業でも、うまく話せず「あれっ」と立ち止まることがある。しかし、A児は、1学期に他の団長立候補者もいる中で選ばれたのである。
 A児が、体調をくずし休んだ。その時、副団長が応援合戦を指揮したが、急なことなので要領よく進まない。このとき、団長の責任の大きさを副団長は感じたようだ。予行会の時は、A児が団長をしている色が常時応援を休むことなく声をからしてがんばっていた。そのことを次の応援合戦の練習時に紹介した。自信を持たせるためである。運動会当日は、腕をけがした副団長と一緒に、力強い応援を繰り広げた。

 Eでは、体育委員長が選手宣誓を行うことになっている。ところが、夏休みに体育委員長が転出することになった。新しく委員長になったのはB児。宣誓の言葉は、委員長と私で話しあった。B児が予行会で、選手宣誓の練習をしたが、マイクがあってもうまく聞き取れないほどであった。放課後、一対一で運動場に出て練習する。「言葉が言いにくい」というので、簡潔にした。みんなに聞こえる声を出す練習を次にする。徐々に委員長と私の距離を離していく。腹から声が出せるようになってきた。次の全校練習の時、マイクを近づけると「マイクはいらない」と言う。よく声の通る選手宣誓になった。

 また、開会式、閉会式の進行も放送係の子どもが行う。柔らかい感じがすると好評である。
 子どもに任せる所と、教師が指導する所の見極めが大切である。身体表現としての体育・運動会が核であるが、言葉の表現も意識した運動会であった。
(安曇川町立安曇小)