続・読み聞かせ&ブックトーク
森  邦 博

 毎週水曜日に15分間の「読み聞かせ」の実践をしている。今回は3年生の教室。
 夏が近づき、真夏日を思わせるような日差しの日もある季節感をとらえて、今回のテーマは「海・ 水」とした。本を選ぶときにはこんなことを考えながら・・・。

(1) 夏休みに「海」に行きたいと思っている子もいるだろう。だから家族で海に行ったことを題材にした本は興味を引くだろう。男の子も、女の子も主人公にした本があるとよいだろう。

(2) 「海」と言えば、磯遊び。磯の生き物に関する本、ビジュアルな情報提供のできる本がよい。でき たらストーリー性のある本で、しかも海の情報が盛り込まれた本がもっとよいだろう。

(3)「海」に囲まれた日本の風土には、昔から海を舞台にした物語が多くあるはずだ。3年生にも無理 なく読めるものはないか?

(4) 日本のお話だけでなく外国の話も紹介したい。
 などと、心の中でつぶやき、3年生の子どもの顔を思い描きながら、本を選択していると、

(5) 「よあけ」(ユリー・シュルヴィツ作・画 瀬田貞二訳 福音館書店刊)を思い出した。かつて6年生の国語の授業で、文を隠して見せ、子どもたちに叙情的な絵を楽しませた後、「絵に自分で考えた文章をつけよう」と、短作文の指導をしたネタ本でもある。
「岸辺で一夜明かした老人と少年が、次第に明けていく朝の湖での朝餉を終え、静かに船をこぎ出す」
 この場面までは紺から青の抑制の効いた色使いで描かれている。が、「そのとき」の頁を開けた次の頁「やまとみずうみがみどりになった」では、水色、黄色そして黄緑に染まった山の絵が頁いっぱいにあふれるように描かれる。これは是非読み聞かせしたい(というより見せたい)と思う。
 このようにして、今回紹介する本を決め水曜日を迎えた。

 その教室は、朝から少し落ち着きがなかった。(1)の本を見せても、本に視線を集中する雰囲気が今ひとつ。しかし、(2)の本を紹介して、ページを開いていくと、自称物知り博士のたくさんいる3年生らしく、子どもの話題が本の内容に関することにまとまってきた。
 (3)の本を紹介するときには、教室が静かに落ち着いてきた。本に助けられる、という実感を味わいながら「よあけ」を見せる。
 最後に、外国のお話を読み終えると、ちょうど15分。

 休み時間には本好きな子が2人、「さっきの本、借りたいんです。」と職員室にやってきた。こんな反応を楽しみながらの実践である。   
(大津市立仰木の里東小)