本棚  メディア・リテラシー 世界の現場から
菅谷明子 著 BK1
岩波新書 2000.8 660円
メディア・リテラシー

 メディア・リテラシーとは機器の操作能力に限らず、メディアの特性や社会的な意味を理解し、メディアが送り出す情報を「構成されたもの」として建設的に「批判」するとともに、自らの考えなどをメディアを使って表現し、社会に向けて効果的にコミュニケーションをはかることでメディア社会と積極的に付き合うための総合的な能力を指す。(まえがきより)

 本書は理論の書ではなく、イギリス・カナダ・アメリカの教育現場で行われている「メディア・リテラシー」の様々な取り組みの様子が紹介されている。
 イギリスやカナダでは、国語のカリキュラムの中にメディア・リテラシーが位置づけられ、『文字の読み書きや文学の読解に加えて、子ども達が日常的に接するテレビ、映画、ラジオ、広告などのマスメディアについて教えることが定着しつつある』という。

 序章  世界に広まるメディア・リテラシー
 第1章 イギリスに根づくメディア教育
 第2章 カナダに広がるユニークな実践
 第3章 アメリカの草の根メディア活動
 第4章 デジタル時代の「マルチ」メディア・リテラシー

 読み進うちに「日本ではなぜ行われないのか」という疑問がわいてくる。視聴覚教育とか放送教育という領域があるが、機器や既成のコンテンツを教育にどう利用するかという視点しかない。教育内容としてメディア・リテラシーを考えていくべきではないのか。総合的な学習の時間にもふさわしい内容であると思う。(常諾真教)