▼子どもたちの日常語の中で気になることの一つに「知らなかった」「聞いていなかった」がある。特に、ルールに関わることが自分に不利になることになると、この言い方をする。大人もこう言われると次に発する言葉がないので、あいまいに妥協していく。学校・家庭での小さな積み上げの中で身につけた子どもの知恵であろうか。

▼今月の目標を決めて生徒指導部から子どもへの連絡をという依頼があった。その徹底度合は、担任によって違った。ある学級は連絡として伝達、ある学級は一人一人に反復させて理解させるという方法であった。いずれも「指導した」ということになるのだろうが、定着度合は、後者がほぼ百パーセント。前者は「知らない」「聞いていない」子が多かった。

▼「指導した」「知らない」とも本当だろうが、そういうゆきちがいは、案外多い。「子どもを大切にする」「基礎が大事」など、言葉で通じても互いの内容にはかなり幅がある。

▼初任者の授業研究会で、ベテランの先生が「こんなよい授業は、私にはできないので感心した」という発言をした。おそらく「私の若い頃は」という言葉が奥にあるのだろうが、一般的には「よい授業」と認知され、初任者も満足してしまった。

▼教育用語は、それだけがひとり歩きするのが怖い。(吉永幸司)