先生、音読だけでいいの?
西 村 嘉 人
この春から、彦根市立城南小学校に勤務することになった。附属小学校に9年間お世話になっていたので実に10年ぶりの公立学校勤務である。しかも、4年ぶりの学級担任で、ドキドキしながら毎日を過ごしている。 国語の学習開きは、椎名誠の「ヤドカリ探検隊」(光村5上)からである。 初めての学習で、 「『ヤドカリ探検隊』では音読の学習だけを行います。テストも音読のテストだけを行います。だから、すらすら間違えずに読めるようになったらそれでよろしい。」 と子どもたちに宣言した。子どもたちは、 「音読だけするのですか。」 と怪訝な顔をしたのだが、 「そうです。音読だけです。」 と涼しい顔で答えた。 1時間目。音読だけの学習であるので、もちろん範読はしない。いきなり句点交替で音読を始めさせた。詰まってばかりで読めたものではない。 「先生、漢字の読み方は教えて」の子どもの声に、教えたい気持ちを我慢して、 「教科書や漢字ドリルで調べてみよう。」 と切り返した。 2時間目。やっぱり音読。後半に初めて一斉読を入れた。 3時間目。ようやく範読を示す。子どもたちだけの読みではことばをとらえられなくなってきたからである。案の定、 「絶海の孤島ってどういう意味ですか。」 と問いかける子どもが出てきた。 その言葉に、待ってましたとばかりに、 「音読はできるようになってきたけど、意味は分からないということばをノートに書きあげて。」 と指示し、4時間目は国語辞典で言葉を調べる学習を進めた。 5時間目。またまた音読。しかし、音読の合間の子どもたちのつぶやきが変わってきた。 「島から10分ぐらいなのに、絶海の孤島って大げさやなあ。」 こんな話を隣同士でやっている。子どもの読み方が質的に大きく変化したのである。 評価テストは3分間の音読テスト。読みまちがった数だけ100点から引き算していく減点方式。評価方法も早くに子どもたちには示しておいた。緊張した声で音読を始める子どもの表情が生き生きしている。読み間違えて、 「あんなに練習したのに。」 と悔しがる子どもの声が生き生きしている。 ことばの学習の基礎基本を鍛える1年でありたいと考えている。 (彦根市立城南小)
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