本棚  学力があぶない
大野 晋・上野健爾 著 BK1
岩波新書 2001.1 740円
学力があぶない

 新学習指導要領に対する批判や学力低下にかかわる論議がさかんである。文部科学省から指導要領の方向を変えるという話が出たり、またそれをうち消したりというおかしなことも起こっている。新指導要領を擁護する論考をほとんど見ないのも不思議なことである。

 本書は対談が多く読みやすい。
 第1章 教育の原点を求めて
  弦楽器指導者 東海正之の教育について、その家族と上野の対談
 第2章 「学力低下」とは何か
 第3章 新学習指導要領と学力低下
 第4章 教育現場からの声
  川嶋優 学習院名誉教授と大野の対談
 第5章 これからの教育をどうするか
  大野と上野の対談

   第2章の小見出しを並べてみると「学力」の問題が見えてくる。
 ・学んだ成果を示す「学力」と学ぶ力としての「学力」
 ・大学生の「学力低下」は学ぶ力としての「学力」の低下
 ・学ぶ意欲、学ぶ力を持続させるためには蓄積された知識が必要
 ・知育をおろそかにする日本の教育
 ・能力を引き出すためには詰め込みも強制も必要である

 第5章では、2人の著者の対談で、学級の人数と個を引き出す教育、授業形態、授業時間削減、六・三・三制と入試制度、総合的な学習、英語教育等の問題点が論じられている。(常諾真教)