本棚  カルトの子 心を盗まれた家族
米本和広 著 BK1
文藝春秋 2000.12. 1571円
カルトの子

 オウムの子どもたちが地域の学校への就学を拒否されるという出来事が何度か報道された。恐ろしいことをした集団の子どもを受け容れることに、拒絶反応を示すのは感情的にはよく理解できる。しかし、その子どもたちがどんな育てられ方をして、今どんな状態なのかは、ほとんど報道されていない。

 本書では、親が、エホバの証人、オウム、統一協会、ヤマギシ会、ライフスペースなどの信者になったとき、その子どもたちがどのように育てられ、育ってきたかを子どもたちからの直接の聞き取りによって明らかにしている。

 親から離して子どもだけを集め、劣悪な環境の中で十分な食料やケアもなく、ほとんど放って置かれるような場合、親と一緒に暮らしていても、信仰にのめり込む親から十分な養育を受けられない場合、いずれにしても幼い子どもにとって、親から見捨てられたという思いは強い。また、理想的な信者に育てるために激しい暴力を受けている場合もある。

 そのような育ち方をした子どもは、相手の気持ちがわからず、集団に適応して社会生活を送っていくことができないという。そんな子どもたちが増えている。親への、社会への警鐘。  (常諾真教)