本棚  不登校児が教えてくれたもの
森下 一 著 bk1
グラフ社 2000.10. 1500円

不登校児が教えてくれたもの
 1982年森下神経内科診療所を開設。「母の会」の結成からフリースクール「京口スコラ」の開設。不登校児のための「生野学園高校」開校、1998年吉川英治文化賞を受賞。この間の著者の歩みと症例とが織り交ぜて語られる。

 副題に「3000超の症例が発する日本の父母へのメッセージ!」とあるように、学校との関わりよりも、子どもと家族との関わりが主である。が、「関わり」というような生やさしいものではなく、子どもと母親・父親が真正面から向き合い、共死を覚悟して共生できるまでの凄絶な葛藤が描かれる。読み進めながら、思わず自分がどれだけ真摯に家族と向き合って生きているかを反省させられる。

 「子供の不登校現象は一見、子供にとっても、その家族にとっても、痛ましいものだが、よくよく考えてみれば、その子にとって初めて家族との本音のぶつかり合い、本当の関係の形成の端緒となる。閉じこもり、自責し、卑小念慮に明け暮れ、時には死を思う。その過程に親たちが正面から向き合うとき、初めてその家族にとっていきいきとした生活が始まる。当初は苦しみを共にし、そして後には本当に明るくすがすがしい家族へと成長する。……子の不登校と対峙し、これと格闘する過程は、その家族が真に生きることそのものだ。」(p260) (常諾真教)