自 分 の 話 を 聞 き な が ら
西 村 嘉 人

 3年生の子どもたちと「話す・聞く」の学習を展開している。
 主な教材は、子どもたちが持ち寄る「私の大事な○○の写真」である。
 学習は教師のスピーチから始めた。一枚の写真を子どもたちに示し、その写真の紹介をしたのである。子どもたちは、興味津々で話に聞き入る。話の途中で思わず質問を口走る子どももいる。身振りでその子たちを制しながらおよそ3分の話を聞かせた。

「先生がどんな話をしたか言える人はいますか。」
 スピーチの後にこのような問いを投げかけた。
「マラソンの話。」
「先生が十年前に出たマラソンのレースのこと。」
「順位は遅かったけど、がんばって走ったからとっても気持ちよかったこと。」
など、話した内容はほとんどの子どもが聞き取れている。

 続いて、
「先生はみんなに分かりやすく話そうといっぱい工夫したんだけど、その工夫を見つけた人はいますか。」
子どもたちは、予想外の質問に答えを見つけられないでいる。
「それじゃ、今の話をテープに録音していますから、それを聞いて先生の話の工夫を見つけてね。」
  と録音テープを聞かせた。聞く目的が内容から話し方の工夫に変わっているので、同じ話に真剣に聞き入っている。聞き終わってすぐに子どもたちが話し始めた。
「いつ、どこで、だれが、とか始めにまとめていっているので聞くときに分かりやすかった。」
「写真に写っている自分の番号を言って写真を見やすく説明している。」
「写真の時の自分の気持ちも言っているからどんな思い出があるか分かった。」
「写真のことだけでなくて、その後のことまで話してたから最後まで楽しく聞けた。」
 子どもたちから次々と発言が出てきた。どれも、子どもたちに気づかせたかったことばかりである。

 次時から子どもたちの「写真紹介」の学習に移った。子どもたちがカセットを欲しがったのは当然である。グループでカセットにスピーチを録音しては聞き返し、話し合いながらスピーチの内容をふくらましていく。友だちの意見を参考にしながら、自分のスピーチを聞き返すとなおしたいところがどんどん見つかってくる。言いっぱなしの学習から、言った内容を聞き返す学習へ変わっただけで、子どもたちは自らことばを磨こうと動き出すのである。
(滋賀大学教育学部附属小)