イ ベ ン ト 屋 と 地 道
杉 澤 周 一

 “歯・口の健康つくり”推進研究文部省指定校としての2年目も半ば。健康教育の研究主任の立場から、子どもと学校・家庭・地域を今までとは違う視点で捉える機会が多く、国語との関連を含め数々の学びを得つつある。

 この研究は、むし歯の数を減らすのではなく、歯を大切に思い、毎食後就寝前に丁寧に歯を磨くことができるような健康観や健康的な生活実践力を育む研究である。
 子どもは急に歯を磨く習慣をつけるわけではない。毎給食後に、その都度、強制すれば磨くが、子どもに力がついたわけではない。また、学級活動の1時間で歯科衛生士によるブラッシング指導をしても、それだけでは、以後の実践力に結びつかない。どちらも一過性のイベント屋としての仕事をしたに過ぎない。

 結局は、望ましい生活習慣、そして学習に対する意欲、よりよく生きようとする向上心、家庭の支えなどに目を向け、子どもの心や生活、学習を耕すことになる。  それらの指導による様々な育ちが作用し合い生きる力として総合化される。それが、それぞれの場面に実践力として顔を出す。自ら歯を磨くのは、その一つである。
 健康観を持ち自ら歯を磨く子どもは、その素地があるということである。他の基本的な生活習慣も身に付き、意欲的に生活している。

 では、その総合化される育ちはどのようにしてもたらされるのか。日々の歯みがきの地道な積み重ねと歯・口に関するイベント的な授業や行事等の連鎖的な指導。そして、歯・口から体、心、生活の健康つくり、学習、人間関係等、生きる力の育成とも絡み合う必要があると考えている。

この学びは、健康教育だけではなく教科の指導にも通じると思う。一つの物語を読むだけにしか意味をなさない指導内容でイベント的に終わっていなかっただろうかと自省してみる。行事作文は、その時限りのイベントとして消化していたのではないか。毎日、少しでも読む・書く・話す活動を長いスパンで積み重ねているだろうか。そして、その国語の指導は、その子とクラス・学年の生きる力の素地を育む指導と同じスタンスで地道に続けている指導だったか。

 みんなで、学ぶ場生活する場の教室を整理整頓したり飾ったり。適時、窓が開いている。いつも黒板がきれい。全員が雑巾がけ、掃き方を知っている。聞くのを待って話す。基礎・基本の九九を覚えている。ハンカチ、タオルを使う。丁寧に字を書く。必ず、歯を磨く。「。」を付ける。鉛筆を削る。けしゴムを持っている。
 これらはバラバラの力ではない。
(能登川町立能登川西小)