▼新聞に次のような投書があった。テストに100点に近い点数を取った中学生に対して、先生が朱筆で「すごい」と励ました。その一言で中学生は意欲的になったという内容である。投書の主は祖母。この投書は小さな波紋を描き、人々にさわやかな思いを届けた。新聞のコラムにも取りあげられたし、講演にも。しかし「すごい」が「おしい」という事だったら爽やかな話題にはならなかっただろう。

▼自分の都合が悪いときは、大きな声で威圧的になり、ごまかしたり茶化したりする子が最近特に目立ってきたように思う。二人の子が戯れていたずらをした。まじめな話をしている時も、冗談としか思えないような返事をした。それを注意した後、必ず自分で注意を受けたことを両親に伝えるようにと約束をした。きちんと伝えられるかどうかに賭けた。(両親には出来事の詳細を伝え、自分で伝えるまで聞き出さないように事前に電話で依頼をした。)

▼一人の子は、おそるおそる両親伝えたという。「今まで、学校のことはあまり言わなかった。自分でお父さんに言ってくれてうれしい。これからも学校のことをお父さんやお母さんは話してほしい。」と、自分から伝えたことについて父親が自分の考えを話してくれたと報告に来た。一人の子は、自分から話をしなかったので、父親が聞き出し話をさせた。いたずらをしたことで注意を受けたとその子は話していた。

▼この出来事がきっかけだったかどうかは定かではないが、前者の子は、学校の話、友達の話を家でもよくするようになり、明るくなったという。後者は、相変わらず、大人のまじめな話は聞けないと。

▼言葉のぬくもりが響いた時、豊かな気持ちになると思うことがある。 (吉永幸司)