廊 下 で 練 習 を
北 島 雅 晴

 1学期の国語の授業を暗唱会で締めくくることにした。教材は、説明文「どうぶつのはな」(東京書籍1年上)である。1学期は、口をはっきりと開けて元気よく音読することを大切にしてきた。そのまとめの学習となる。
 音読ではなく暗唱にしたのは、二つの理由がある。一つは、学習に1年生なりの緊張感を持たせたかったからである。音読ならば、自分がどれだけ上手になったかが分かりにくい。その点、暗唱は、どれだけ覚えられたかということで、自分の伸びがはっきりと分かる。
 もう一つは、音読が苦手な子に対しての配慮からである。音読よりも暗唱の方が難しいとも考えられるが、入門期には、文字を目で追うよりも耳で覚えてしまう子もいる。耳で覚えた文章は、いわゆる「つぶ読み」にならず、リズムある読み方ができる。リズムよく読むことを体験してほしいと考えたのである。

 この教材は、13の文から成り立っている。まずは、1人1文ずつ分担を決め、13人で暗唱することから始めた。慣れてきたら、1人2文(6〜7名で読む)、1人3文というように暗唱する量を増やしていった。
 1人が3文を受け持つと、4〜5名のグループになるので、グループで練習させるようにした。授業の後半には、グループごとの発表の時間をとる。あるグループが発表した時途中で暗唱できなくなる場面が生まれた。こんな時は、「私にはできないんだ」という思いをもち自信をなくさないようにしなければならない。何か声をかけようと思った時、
「先生、廊下でもう一度練習してきていい?」
と、グループの中の子が言った。グループの中で暗唱できなかった子にとっても、いい提案であった。
「間違ったことは気にしないで、もう一度みんなで練習しておこう」と声をかけた。
 この子の言葉が、みんなに影響を与えた。何かの発表で不安がある時には、
「廊下で練習してきます」
と気軽に練習するようになった。廊下での練習は、教室での練習よりも一段と真剣である。1人の子のちょっとした一言がきっかけとなり、暗唱の練習にも熱が入った。

 暗唱会では、この文章を何人で読みたいかを選ばせた。例えば、2人グループならば、全体を2つに分けることになる。説明文の学習でありながら、暗唱にこだわって学習を進めた。暗唱できる部分が増えることで自信をもち、みんなの前で堂々と発表する姿が見られた。
(草津市立草津第二小)