朝 の 歳 時 記
廣 瀬 久 忠
職員室前の小黒板に日替わりのメッセージを書き続けている。
この黒板を書き替えるのが、私の朝一番にすることである。 読んでくれる子どもは数少ないであろう。小黒板の前に立ち止まる子どもに出くわすと「これでよし」と感じる。漢字には、全てルビを振っているので一年生も読める。高学年が二人、三人で声を合わせて読んでくれる時もある。 6月6日、担任が出張された6年の教室に行くと、A君が私に、 「夏の山を『山滴る』と言うんでしょう。じゃあ、春や秋や冬はなんて言うんですか。」 半ば、気持ちは小躍りしつつ、これはチャンスとばかりにクラスのみんなに少し時間をもらって「山の四季」を表す季語の話をした。黒板に、 山□□、山滴る、山□□、山□□ と書き、ヒントを出しながら、子どもたちに考えてもらった。山を擬人化している季語である。冬「眠る」が一番出やすかった。続いて秋。紅葉のきらびやかさをヒントに「粧う」。春は「春を迎える人々の心情」を手がかりに「笑う」が出てきた。それぞれの季語に落ち着くまでにたくさんのことばが出された。さながら「言葉の宝庫」である。 A君の存在でこの子どもたちと「ことば」の学習を共有できた。 「ことば」にふれる小文。石部の自然にふれるきっかけとなる小文を読んでくれる子が増えることを願っている。 (石部町立石部南小)
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